南国土佐・窪川、そこに文本酒造がある

酒の隠れ里は、南国土佐にもある。
高知県中西部に位置する高岡郡四万十町。標高250メートルの高南台地を中心に広がった、人口約1万7000人の高原の町だ。清流・四万十川の源流、美しい興津(おきつ)海岸などいまなお、山、川、海の豊かな自然が残り、のどかな風情が漂っている。
その四万十町の中心商店街に蔵を構える、文本酒造。
創業は明治36年、町一番の酒蔵として開かれた。当時は町内に8つほどの酒蔵があったが、現在造り続けているのは文本酒造だけだ。


DATA
住所■ 高知県高岡郡四万十町本町4-23
電話■ 0880-22-0039
FAX■ 0880-22-2670
創業■ 明治36年
社長名■ 文本 憲助
杜氏名■ 文本 憲助
蔵人数■ 4名
主な出荷先■ 高知県
製造銘柄名■ 桃太郎
フレッシュ入駒
桃太郎吟醸


四万十の清流で酒を仕込む

四万十町は日本最後の清流として名高い四万十川の源流域。そこに蔵を有する強みは、非常に大きい。
酒造りの命は水。
文本酒造が用いるのは、あの四万十川の水だ。
創業以来、四万十川の伏流水をろ過して使用。原料の米洗いや仕込みなどのために、蔵に二本の井戸を引いている。
また、昼夜の温度差が激しいという台地特有の環境も好条件になっており、まさに自然を味方にした酒造りといえる。


創業時の代表銘柄は「入駒」。現在では、昭和41年生まれの清酒「桃太郎」が看板の酒となり、文本酒造の代名詞として使われるまでになった。一般公募で選ばれた「桃太郎」という名前には、若者からお年寄りまで、幅広く親しまれる酒でありたいという願いも込められている。
その桃太郎造りに精を出すのが4代目・文本憲助。自ら杜氏の役割を担う。文本酒造では、蔵元が酒造りと蔵人の育成を行っているのだ。小規模ながらも、確かな腕前で、地元に根差した酒造りを続けている。
 
土佐酒と言えば端麗辛口が主流だが、桃太郎はやや甘口。これは「清酒を燗したとき、どれだけ飲みやすいか」を追求した結果であり、文本酒造の酒質へのこだわりだ。その信念は、創業当時より頑固に貫かれ、代々守り続けられている。
約13年くらい前からは、吟醸酒づくりにも独自の方法で取り組み、「桃太郎吟醸酒」を完成させた。喉越しが良く、まろやかで、程よい甘さが絶妙だと、高い評価を受けている。
また、創業時の銘柄「入駒」は、おり酒「フレッシュ入駒」として今も生かされている。
少量生産ならではの手造りの酒、本物の味わい。
飲む人の期待を裏切らず、品質を維持しながら、好まれるものを地道に造っていきたい---文本酒造の酒には、蔵元のそんな心が込められている。